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    【初心者用🔰】【用語解説📖】「ルネサンス」は”ギリシャ・ローマ神話復興”なのにキリスト教の宗教画も含まれるのはなぜ?|宗教画から学ぶ「ルネサンス」の本質とは?

    「ルネサンス」と調べると、「キリスト教によって弾圧されていたギリシャ・ローマ神話の再生・復興運動」という解答が得られます。

    実際、ChatGPTで「ルネサンスについて教えて」と質問したところ、以下のような回答でしたので、抜粋して紹介します。

    ルネサンス(Renaissance)とは、14世紀から16世紀にかけてヨーロッパで起こった文化・芸術・思想・学問の大変革の時代を指します。
    「ルネサンス」とはフランス語で「再生」「復興」を意味し、特に古代ギリシャ・ローマの文化の再発見と復興を指します。
    中世ヨーロッパでは、キリスト教中心の価値観が支配していましたが、ルネサンス時代には人間の理性や美、個性を尊重する動きが起こりました。
    なぜルネサンスが起きたのか?
    ・ イスラム圏からの知識流入(十字軍や商人を通じて古典文献が再発見された)
    ・ 印刷技術の発明(グーテンベルクによって本が大量に広まる)
    ・ 都市の発展とパトロンの支援(メディチ家などの富裕層が芸術を後援)


    しかし例えば、ルネサンスを代表する画家の一人、ラファエロの代表作の一つである《小椅子の聖母》では、聖母マリアと幼子イエスの姿を描き出しています。

    引用:小椅子の聖母 – Wikipedia

    他にも、ルネサンス絵画の父とも呼ばれるジョット《ユダの接吻》や、初期ルネサンスを代表するフラ・アンジェリコ《受胎告知》のいずれも新約聖書の場面を描いています。

    引用:ジョット・ディ・ボンドーネ – Wikipedia
    引用:受胎告知 (フラ・アンジェリコ、サン・マルコ美術館) – Wikipedia

    ここで疑問が湧きますね。

    「”ルネサンス”は”ローマ・ギリシャ神話の再生・復興運動”のハズなのに、どうしてキリスト教を題材とした絵画もルネサンスを代表するものとして扱われているのだろうか?」

    今回は、この疑問についてわかりやすく、そして丁寧に解説していきます。

    ルネサンスとは一体何だったのか?

    そしてそれは、絵画にどんな変化をもたらしたのか?

    この記事を読んで、ぜひすっきり解決していってくださいね!

    【こちら】の記事では、ルネサンスの前と後、そして宗教革命に至るまでの大筋を解説していますので、よろしければぜひご覧ください


    目次

    中世の宗教画──そこに人間らしさはなかった

    単刀直入に答えを言うと、ルネサンスによる大きな変化というのは、「芸術に人間味をもたらした」ということになります。

    ルネサンス以前、つまり中世ヨーロッパ(5~14世紀)では、芸術は「信仰の道具」として存在していました。

    絵画はあくまで神を讃え、教会で人々に信仰を促すための“聖なるイメージ”だったのです。

    そのため、当時の宗教画にはこんな特徴が見られます。

    • 人物は真正面から描かれ、感情のない無表情
    • 背景は金箔で飾られ、現実感や奥行きがない
    • 体の動きや重さ、表情の変化などは避けられていた

    たとえば、作者不明《ウラジーミルの生神女》(12世紀)は、代表的な聖母像。

    引用:ウラジーミルの生神女 – Wikipedia

    マリアとキリストは顔を寄せ合ってはいますが、その表情には感情らしさがなく、観る者に“人間の温かさ”は伝わってきません。

    また、イタリアの画家チマブーエによる《荘厳の聖母》(1280年頃)は、玉座に座るマリアが正面を向き、硬直した天使たちが左右対称に並ぶという非常に様式的な構図です。

    引用:荘厳の聖母 (チマブーエ) – Wikipedia

    要するに、神聖かつ厳かであることを求められた中世の絵画は、それらを強調するあまり、人間味を排除した表現が支配的だったのです。

    他宗派の持ち出しになってしまいますが、仏像のような”仏頂面”しか認められなかったわけですね。


    では、ルネサンスは何を変えたのか?

    14世紀後半から15世紀にかけて、イタリアを中心に「人間そのもの」に注目する思想が台頭します。

    これがルネサンス(再生・復興)です。

    ルネサンスの画家たちは、「人間の身体や感情は、神が創った美しいものだ」という古代ギリシャ・ローマの考えを再評価しました。

    芸術はただ神を讃えるだけでなく、「人間を描くこと」そのものが価値ある行為とされるようになったのです。

    代表的な作品の1つが、ジョットの《キリストの哀悼》(1304-1306頃)。

    引用:ファイル:Giotto – Scrovegni – -36- – Lamentation (The Mourning of Christ) adj.jpg – Wikipedia

    十字架から降ろされたキリストを前に、マリアや使徒たちがキリストの周りを囲みながら嘆き、悲しみに暮れています。

    ここには、かつての宗教画には見られなかった感情表現の豊かさがあります。

    さらに、ラファエロの《小椅子の聖母》(1514頃)では、母と子のあたたかい眼差しや、丸く包み込むような構図が印象的です。

    引用:小椅子の聖母 – Wikipedia

    聖母とキリストという宗教的なテーマでありながら、その絵は私たちの日常にも通じる親子の愛情を感じさせてくれます。


    🔶 中世からルネサンスへの変化を比較してみよう

    時代代表作品特徴人間味
    中世ウラジーミルの聖母(12世紀)金地背景・無表情・形式的
    中世荘厳の聖母(チマブーエ・1280)静的な構図・象徴重視
    初期ルネサンスキリストの哀悼(ジョット・1304-06)感情表現・奥行き
    盛期ルネサンス小椅子の聖母(ラファエロ・1514)人間的な構図と表情

    このように、ルネサンスによって「宗教画」はそれまでの硬直した記号から、感情や身体のリアリズムを持つ“芸術”へと進化したのです。


    部屋に飾るなら、どっちの宗教画?

    さて、インテリアとして絵画を取り入れたいと思ったとき、どちらの作品を飾りたくなるでしょうか?

    • 金色背景に無表情な聖人たちのイコン
    • 微笑み合う母子、豊かな色彩と奥行き、あたたかみのある宗教画

    きっと多くの人が後者を選ぶはずです。

    ラファエロやジョットの作品は、「宗教画」でありながら、どこか現代にも通じる優しさや人間らしさがにじんでいます。

    だからこそ、私たちは500年以上が経った今でも、彼らの人間味溢れる作品に心を動かされるのです。


    おわりに──ルネサンスは「人間を取り戻した」革命だった

    ルネサンスは、ただ古代を真似た運動ではありませんでした。

    それは、「人間は美しい存在である」「感情を持つことは尊い」という価値観を芸術に取り戻す、大きな転換点でした。

    もし、あなたの部屋に宗教画を飾るとしたら、ぜひルネサンス絵画の世界についても興味を持ってください。

    そこには、神と人間が共に歩む、あたたかなまなざしが描かれているはずです。

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