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純粋な愛などあり得ない!?愛と同時に生まれる幸福、猜疑心、偽り…感じ方は人それぞれ!ブロンズィーノ『愛のアレゴリー』にあなたは何を思う?

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こんにちは!皿(sara)です☺️

今回は、アーニョロ・ブロンズィーノ作『愛のアレゴリー』(1540〜1545年頃)という絵画を紹介していきます!

アレゴリーは翻訳すると「寓意」となります。

ある意味を、直接には表さず、別の物事に託して表すこと。また、その意味。「寓意を含んだ絵」

参考:寓意(グウイ)とは?意味や使い方 – コトバンク

平たく言えば”謎解き”のようなことを指すのですね。鑑賞者に絵画を詳細に観察させ「この部分はこんな意味だろう」「この部分はこんなことを表しているのだろう」などと考える楽しみ方ができることが特徴です。

また、作者の本名は「アーニョロ・ディ・コジモ・ディ・マリアーノ・トーリ」といい、「ブロンズィーノ(またはブロンツィーノ)」はすなわち「ブロンズ」、「青銅」の意味なのです。なぜ「青銅」なのかというと、なんと「顔が青白かったため、そのあだ名」なのだそうです(他にも「青銅のように冷たい画風だから」とか「本人の髪の色が青銅のようだったから」とも言及されていました。なんだか言いたい放題ですね(笑))。そんなあだ名が500年も経った今定着してしまっているのは面白いことですが、本人はどう思っているのかと想像することもちょっと面白いです。

この「あだ名の定着」というのはブロンズィーノのみならず、他の画家でもよく見かけます。例えば「マザッチオ」という画家の本名は「トンマーゾ」なのに、身なりに気を使わなかったために”汚いマーゾ”というあだ名の「マザッチオ」が定着していますし、「パルミジャニーノ」と紹介されている画家もおりますがパルミジャニーノは「パルマ(イタリアの都市)の人」という意味ですし、「エル・グレコ」と紹介される画家の本名は「ドミニコス・テオトコプロス」なのにもかかわらず「ギリシャ人」を意味する「グレコ」で紹介されています。
このようにあだ名の方が定着してしまっている画家が他にもいるかと思いますので、画家の名前を知っても「あだ名なんじゃないか」と疑う癖をつけたいと思います。

さて、前段が長くなってしまい申し訳ございませんでした。では、知的好奇心がくすぐられる『愛のアレゴリー』の魅力を一緒に学んでいきましょう!

目次

描かれた歴史

ブロンズィーノは、14〜15世紀(ルネサンス期)のフィレンツェ(イタリアの都市)において銀行業や政治家として隆盛を極め、実質的な支配者となったメディチ家から重用されました。『愛のアレゴリー』は、そんなメディチ家からフランス国王にプレゼントとして贈られたという歴史があります。

当時の王やそれに近しい特権・上流階級の人々は、寓意画のような知的好奇心を刺激する活動を好んだそうです。「学校」を意味する英語”school”の語源は古代ギリシャ語”schole”で、意味は「暇」です。余裕があるからこその学びや知識の習得なのですから、特権階級での知的遊びの流行は当然と言えるのかもしれません。

描かれている人物(?)+α

まず前提としてですが、『愛のアレゴリー』に描かれている寓意は未だ読み解かれておらず、議論が続いています。逆に、答えが明確になってしまったら興醒めにも思えますので、むしろこの先もずっと謎のままの方が個人的には好きでいられる気がします。

ただ全部が全部謎というわけではありませんので、わかっていることを紹介していきます。

※ 説明のため絵画に番号を加えています

引用:愛の寓意 – Wikipedia

『愛のアレゴリー』には全部で9つの登場人物がいます。

❶ ヴィーナス

ギリシャ・ローマ神話の女神です。左手には黄金のりんごを持ち、右手はキューピッドの背後にあり矢を掴んでいます。矢はキューピッドが所持するものなので、恐らく抜き取っているものと考えられます。

❷ キューピッド

ヴィーナスの子とされています。…ということは親子で接吻をし、右手はヴィーナスの乳房を掴んでいます。2人の関係は「家族でかつ恋人」という「罪」とさえ言えるものです。左手はヴィーナスの髪飾りに手を伸ばしており、髪飾りを外そうとしているように見えます。

ヴィーナスとキューピッドは親子です。それは恋人とはまた異なる「至高の愛」が存在する場所であることは間違い無いでしょう。しかしながら本作では、まるでお互いに色欲を感じ、加えて相手の物を盗み取ろうとしているように見えます。これだけでもなかなかハードな描写ですね。しかしそれを取り巻く他の存在が『愛のアレゴリー』をさらに難解に、奥深いものとしています。

❸ 【快楽】

ピンクの花びらを振り撒く少年。無邪気にはしゃいでいるように見えます。持っている花は❾の鳩と同じく「愛」の象徴とされています。

❹ 【欺瞞】

暗い背後から冷たい眼差しを送る存在。身体は獣であり、両手をよく見ると左右が逆になっています。右手には蜂の巣(はちみつ)が乗せられていますが、左手にはサソリがいます。アメとムチ?

❺ 【嫉妬】

髪を掻きむしっている老婆。

❻ 【時】

肩に砂時計を乗せていることから【時】の擬人化と考えられています。青いベールを掴んでいて、これをある書籍では「時間が経つことでヴィーナスとキューピッドの罪が暴かれる」と説明されていましたが、別の書籍では「時間が経つにつれて2人の罪は覆い隠される」とも言われており、こちらも解釈は様々あるようです。

❼ 【真理】

【時】と同じくベールを掴んでいますが、これは「協力して暴こうと(覆い隠そうと)している」のか、はたまたお互い逆のことをしようとしているのか…。個人的には【時】が【真理】から無理やりコントロールを奪い取ろうとしているように見えます。

❽ 【偽り】

2つの仮面が置かれています。

❾ 鳩【愛欲】

「愛」の象徴です。

以上『愛のアレゴリー』の登場人物でした。なかなか手強い象徴ばかりで、互いの表情や位置関係などからそれぞれの思惑やを類推するしかなさそうです。ただ前述のように、今でも解明されていない絵画でありますから、それぞれが細部まで見て「こういう意味なのではないか?」と考えて楽しむ方法が最適なのではないかと思います。

そもそも作品を通じた感じ方は人それぞれである、ということを絵画を深く見て観察力を上げるトレーニング!書籍紹介『観察力を磨く名画読解』のページでも紹介しておりますので、ご興味があればぜひそちらもご覧ください。

こんな人におすすめ!

『愛のアレゴリー』はこんな人におすすめ!
○ 「余裕」を重要視している人
○ 知的活動が好きな人
○ 答えのない問題を考えることが好きな人
○ 愛は幸福なものばかりではないと考える人

「愛を幸福なものばかりではない」と言うと、「そんなことを言うのは覚悟がないからだ」「最初から完全無欠を目指さない愛なんて語るな」などという批判が聞こえてきそうです。ですが、それらは希望的観測に過ぎないと個人的には思います。

個人的には、最終的に不倫などなく終わろうが、途中で離婚しようが結果論でしかなく、よってマイナスの面が微塵もない「完璧な愛」などは存在し得ないものと考えます。『愛のアレゴリー』が示すように、多かれ少なかれ、愛が生まれれば同時に猜疑心や偽り、嫉妬が生まれるものです。これらを無いものとし、完璧を目指してしまうから、多少の亀裂が大きなすれ違いになってしまうのだと思います。

愛あるところには多少なり負の感情も生まれることは前提として、それとどう向き合っていくかをパートナーと乗り越えてこそ、本物の「愛」と言えるものと考えます。

おわりに

以上でアーニョロ・ブロンズィーノ作『愛のアレゴリー』の紹介を終わります。いかがでしたでしょうか。

なかなかセンセーショナルな絵画なので、初見の方は驚いたかと思います。私もそうでした。しかし絵に表されたメッセージを知っていくにつれ、「寓意」という方法があること、そして一筋縄ではいかない変化球的な絵画の面白さを学ぶことができました。

本文中でも申し上げましたが、現代でも議論する余地があるからこそ、『愛のアレゴリー』は不朽の名作となったのかもしれません。こういう謎は一旦離れ、シャワーの途中や散歩中などで不意に「あの部分はこんな意味なんじゃないか」と急に思い出すことがあるので面白いです。きっと、私にとってはこれから先も様々な意味で忘れられない絵画の1つなったかと思います。

それでは、この辺で。ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!

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