こんにちは!皿(sara)です☺️
今回は世界的名著と言っても過言ではない、グスタフ・クリムト作「接吻」という絵画について紹介していきます。
私がこの絵画と初めて出会ったのは大学の美術の講義でした。確か、一般教養の美術を学ぶ講義だったかと思います。今にして思えばもっと興味持ってちゃんとやっていれば良かったなとつくづく思うわけですが、まあ、学校の授業なんてそんなもんですよね(笑)。他にもたくさんの画家や絵画を勉強したはずですが、9割5分忘れていると思います(そんな中でもモネの「睡蓮」やミレーの「落穂拾い」、そしてなぜかメキシコの女性画家フリーダ・カーロとその夫の壁画家ディエゴ・リベラの話を強烈に覚えています)。
さて、私の記憶の彼方に飛ばされることなくインパクトを残した「接吻」。金色がふんだんに用いられた絵はとても豪華で、キスをする男女をこれでもかと引き立たせています。しかしよく見てみると気になるところが…。「この絵どう思う?」と、見た人同士で話し合ったら楽しそうな絵画です!
基本情報
1907−1908年に描かれたこの絵は現在、クリムトの出身地でもあるオーストリアのオーストリア絵画館に所蔵されています。大きさは180cm×180cmと、意外とサイズがあります。画面一杯の金色は、目の前にしたら壮観なのでしょうね。
描かれている女性ですが、諸説あるそうです。
モデルは諸説ありますが、クリムトと恋人のエミーリエ・フレーゲとする説や、資産家の妻でクリムトの愛人であったアデーレ・ブロッホ=バウアーとする説も……。(中略)クリムトは生涯独身を貫きましたが、多くの女性と関係を持ち、少なくとも14人の子どもがいたとされています。
引用:井内舞子『教養として知っておきたい名画BEST100』(2021年 永岡書店)
「英雄色を好む」ということでしょうか。エネルギーが滾っていたクリムトだからこそ、ここまで派手な絵を描き上げることができたのだと思います。
2人が崖の先端に描かれている意味
「接吻」は、ただキスする男女の幸福を描写しているだけではありません。「なぜ?」と思う箇所について、一緒に見ていきましょう。
なぜ崖の先端にいるのか
「接吻」に描かれている男女は、よく見ると崖の先端部分にいます。これは、「2人の危うい運命」であったり、「幸せと不幸は隣り合わせ」であったりを意味しています。スリルがあるからこそ幸福を感じられる。まるで、「吊り橋効果」を説明しているような描写ですね。
2人がいた場所が崖になったか、2人が崖に向かったか
さて、私がここで疑問に思ったのは、崖にいる2人ですが、これは「もともと2人がいた場所はただの平地だったのが崩れて崖になった」のか、もしくは「2人が自ら崖の先端に向かったか」です。「いや、平地が崩れて崖になるわけない」とも思いましたが、それを言っては人間が金色に輝くわけはないので却下。
これについて私は、後者の結論に至りました。
まず、自分が幸せになるために、自分が好きになれる異性を探すものだと思います。例えばよく「浮気しない人が良い」などと言いますが、浮気をしなさそうな(できないとも言えます)人なんていくらでもいるのに、それでも美形だったり、高スペだったりを選ぼうとするものだと思います。そりゃ、浮気されるリスクも上がるものです。
頭ではリスクだと分かっていても、幸福を感じたい心には逆らえない。リスクを承知で幸福に近付こうとするから、きっと「2人が自ら崖の先端に向かった」のだと思うのです。
一応断っておきますが、「崖の先端にいなければ幸福ではない」などと言うつもりは毛頭ございません。きっとこの崖の地続きには、安定した平地で金色に包まれる男女がいるでしょうから。
あなたは「2人がいた場所が崖になった」か、「2人が崖に向かった」か、どちらだと思いますか?
なぜ女性が先端か
では、なぜ男女のうち女性が崖の先端に位置されているのか。これについて私は「もしもの時のリスクが女性の方が大きいから」と思っています。最大のリスクはもちろん「妊娠」。子どもを授かることは最高の幸福である一方、望まない妊娠であった場合は人生に大きく関わります。男性は(嫌な言い方ですが)最悪逃げ出すこともできます。
しかし逆に言えば、女性の方が先端に近い分(=背負うものが大きい分)、男性には決して辿り着けない幸福を得ることができるのだとも解釈できます。
崖が崩れるとき、助かるか助からないかの命運を分ける一歩は男性の方が恵まれている。しかし女性には、我が身全てと引き換えのリスクを負うことで、最高の幸福を得ることができる。男女のその明確な違いを、この位置関係は示しているように思えます。
日本の金屏風の影響
「接吻」の金色について豪華だ派手だ言ってきましたが、実はなんと、日本美術の影響があるとも言われています。日本美術において金色は古くから用いられてきたのです。
引用:燕子花図 – Wikipedia
日本を代表する絵画の派閥「琳派」の代表者、尾形光琳による作品です。
引用:狩野永徳 – Wikipedia
こちらも同じく、日本を代表する絵画の派閥、狩野派の狩野永徳による作品です。
どちらも「接吻」に劣らず、金色を見事に扱っています。
実は、あの「ひまわり」で有名なゴッホも日本画に感動し、日本への憧れがあったと言われていて、また印象派の創始者であるモネも自宅に日本庭園を模した庭を作ったほどです。
私はエキゾチックな雰囲気が好きでつい西洋絵画を好んで勉強してしまいますが、日本人として、我が国の世界に誇る美術についてもしっかりと学んでいきたいと思います。
おわりに
以上で、グスタフ・クリムト作「接吻」の紹介を終わります。いかがでしたでしょうか。
二項目で疑問を呈しました「男女がいた場所が崖になったか、もしくは自ら崖に向かったか」と「なぜ女性が先端か」は、数日の間本当に考えを巡らせました。こうした、見て終わりではなく見終わってもなお深読みしたくなる絵画は、1人で考えても、誰かとお互いの考えを話し合っても面白いですよね。これからもそんな絵画との出会いを楽しみに学んでいこうと思います。
それでは、この辺で。最後まで読んでいただいてありがとうございました!
参考文献:井内舞子『教養として知っておきたい名画BEST100』(2021年 永岡書店)/ 佐藤晃子『名画のすごさが見える西洋絵画の鑑賞辞典』(2020年 永岡書店)