美術館は、知識がなくても楽しめる場所。
「美術館に行ってみたいけれど、どう楽しめばいいかわからない」
「絵の見方がわからないから、行っても退屈しそう」
「有名な作品を見ても、何を感じればいいのかわからない」
そんなふうに感じたことはありませんか。
美術館という場所は、少し特別で、静かで、知識のある人だけが楽しむ場所のように見えるかもしれません。
けれど、本当はもっと気軽に楽しんでいい場所です。
絵の知識がなくても大丈夫です。
画家の名前を知らなくても大丈夫です。
美術史が全くわからなくても大丈夫です。
大切なのは、
自分の目で見て、自分の心がどう動くか
を味わうことです。
このページでは、はじめて美術館に行く方や、もっと気軽に楽しみたい方に向けて、美術館の楽しみ方を紹介します。
まずは「全部理解しよう」としなくていい
美術館に行くと、たくさんの作品が並んでいます。
作品名、作者名、制作年、技法、解説文。
情報が多くて、すべて理解しようとすると疲れてしまうことがあります。
でも、美術館では、すべての作品を完璧に理解する必要はありません。
むしろ、最初は
「気になる作品をいくつか見つけられたら十分」
くらいの気持ちで大丈夫です。
エイミー・E・ハーマン著『観察力を磨く 名画読解』という書籍によると、人が美術館で一つの作品を鑑賞する時間はなんと平均で17秒なんだそうです。
「意外と皆んなそんなもんなんだ」と思っていただいて大丈夫です。
私自身、あまり興味が出なかったものはすぐ次に行ってしまいます。
思ったよりも展示の数は多いので、気に入ったものだけに集中する、という楽しみ方でOKです。
「この色が好き」
「この絵だけ妙に気になる」
「これは部屋に飾ってみたい」
「なんだか落ち着く」
「この既視感はなんだっけ」
「少し怖いけれど、目が離せない」
そんな感覚があれば、それだけで十分に美術館を楽しめています。
絵を見ることは、正解を当てることではありません。
自分の中に生まれた感覚に気づくことです。
そして、「今回の展示のイチオシを決める」「お土産のポストカードを買う」などができれば万々歳です。
美術館に行く前の楽しみ方
美術館は、行く前から楽しむことができます。
まずは、公式サイトやチラシを見て、
どんな展覧会なのかを軽く確認してみましょう。
ただし、事前に細かく勉強しすぎる必要はありません。
おすすめは、次の3つだけ確認することです。
- どんなテーマの展覧会か
- 代表的な作品は何か
- 開館時間やチケット、アクセス
このくらいで十分です。
特に初心者の方は、難しい解説を読み込むよりも、
「なんとなく面白そう」
「この絵は実物で見てみたい」
と思える作品をひとつ見つけておくと、美術館に行く楽しみが増えます。
事前にお気に入り候補をひとつ決めておくと、
展示室に入ったときに
「この作品に会いに来た」
という気持ちで鑑賞できます。
服装は、歩きやすさを大切にする
美術館に行くとき、服装に特別な決まりはありません。
少しおしゃれをして行くのも楽しいですし、
普段着で気軽に行っても問題ありません。
ただし、美術館では思った以上に歩きます。
展示室を移動したり、立ち止まって作品を見たりする時間が長くなります。
そのため、靴は歩きやすいものがおすすめです。
また、展示室は作品保護のために温度が低めに感じられることもあります。
冷えやすい方は、羽織れるものを持っていくと安心です。
美術館では、
おしゃれさよりも、疲れにくさ
を少し意識すると、最後まで気持ちよく楽しめます。
入館したら、まず全体を軽く見る
展示室に入ったら、最初から一枚一枚をじっくり見ようとしなくても大丈夫です。
まずは一周、全体を軽く歩いてみるのがおすすめです。
どんな雰囲気の作品が多いのか。
明るい作品が多いのか、静かな作品が多いのか。
大きな作品があるのか、小さな作品が多いのか。
展示全体の空気を感じるだけでも、美術館独自の楽しさがあります。
その中で、「おっ」と引っ掛かった絵画の前でだけ立ち止まって見つめてみる。
すべての作品を同じ熱量で見る必要はありません。
美術館では、
気になった作品に時間を使う
という楽しみ方で大丈夫です。
作品を見るときのポイント
作品を見るときは、難しいことを考えなくても構いません。
まずは、次のような問いを自分に投げかけてみてください。
- 最初に目に入ったのはどこか
- どんな色が印象に残るか
- 明るい感じがするか、静かな感じがするか
- 好きか、少し苦手か
- 部屋に飾るなら、どこに置きたいか
- この絵の中に入れるなら、どこに立ちたいか
- 次の瞬間、画面はどう動くか
- どんな音や空気を感じるか
このような見方をすると、ぐっと絵に引き込まれます。
「正しい感想」を持つ必要はありません。
たとえば、
「青がきれい」
「この人の表情が気になる」
「思ったより大きい」
「なんとなく寂しい」
という感想でも十分です。
作品を見ることは、知識を確認することではなく、
自分の感覚を確かめる時間でもあります。
解説文は、最初に読まなくてもいい
美術館では、作品の横に解説文が書かれていることがあります。
解説文を読むと、作品の背景や意味がわかり、より深く楽しめます。
ただ、初心者の方におすすめしたいのは、
まず作品を見てから、解説を読む
という順番です。
先に解説を読むと、どうしても
「この作品はこう見るべきなんだ」
と感じてしまうことがあります。
もちろん、それも悪いことではありません。
ただ、最初に自分の感覚で見てみると、作品との距離が少し近くなります。
おすすめの流れはこうです。
まず、作品を見る。
自分なりに何か感じる。
その後で解説を読む。
もう一度作品を見る。
この順番にすると、
「自分はこう感じたけれど、作品にはこんな背景があったんだ」
という発見があります。
解説は、答え合わせではありません。
作品をもう一度見るためのヒントです。
有名作品だけを目当てにしてもいい
展覧会に行くとき、
「有名な作品だけ見に行くのは浅いかな」
と思う必要はありません。
有名な作品には、多くの人を惹きつけてきた理由があります。
まずはそこから入るのは、とても自然なことです。
むしろ、初心者の方は、
「この作品だけは見たい」
という目当てをひとつ持って行くと楽しみやすいです。
有名作品を実際に見ると、印刷やスマホ画面ではわからないことがあります。
思ったより大きい。
色が想像よりやわらかい。
筆の跡が見える。
近くで見ると荒く、離れると美しく見える。
画面越しよりも空気感がある。
実物を見る楽しさは、そこにあります。
有名だから見る。
話題だから行く。
SNSで見かけて気になったから行く。
そんなきっかけでも大丈夫です。
疲れたら、休んでいい
美術館では、意外と疲れます。
静かな空間で集中して作品を見ていると、
体よりも先に頭や心が疲れてくることがあります。
特に大きな展覧会では、作品数が多く、
序盤は集中できても、途中で疲れてしまいます。
そんなときは、無理をせず休みましょう。
ベンチに座る。
他の来客者を観察する。
ミュージアムカフェで休む。
もう一度見たい作品だけ戻って見る。
これで十分です。
美術館は、気軽に楽しむ場所です。
最後まで集中できなくても、
「今日はこの一枚が好きだった」
と思える作品に出会えたなら、それだけで良い時間です。
おすすめは「一番好きな作品」を決めること
美術館を楽しむ方法として、
今日の一枚を決める
という見方があります。
展示を見終わったあとに、
「今日、一番好きだった作品はどれだろう」
と考えてみるのです。
有名な作品でなくても構いません。
小さな作品でも、解説が少ない作品でも、
自分の心に残ったなら、それが今日の一枚です。
今日の一枚を決めると、美術館の記憶が残りやすくなります。
「あの青い絵がよかった」
「あの静かな風景画が忘れられない」
「あの人物の表情が気になった」
そんなふうに、帰ってからも思い出しやすくなります。
過去に私も、絵画目当てで訪れた美術展でしたが、
その日最も印象的だったのが実物の「スコップ」だったこともあります。
また、もし可能であれば、ミュージアムショップでその作品のポストカードを探してみるのもおすすめです。
ポストカードを一枚持ち帰るだけで、
美術館で感じた気分を、家でも思い出すことができます。
ミュージアムショップも楽しむ
美術館の楽しみは、展示室だけではありません。
ミュージアムショップも、美術館の大きな楽しみのひとつです。
展覧会に関連した図録、ポストカード、クリアファイル、文具、雑貨など、
作品の雰囲気を日常に持ち帰れるものが並んでいます。
私の特におすすめなのは、ポストカードです。
価格も比較的手に取りやすく、
気に入った作品を家で飾ることもできます。
額に入れて飾る。
デスクに立てかける。
手帳にはさむ。
季節ごとに入れ替える。
ポストカード一枚でも、部屋に小さな美術館の記憶を残すことができます。
美術館で好きな作品に出会ったら、
ぜひショップで関連グッズを探してみてください。
美術館カフェで余韻を楽しむ
美術館にカフェがある場合は、展示を見たあとに少し休むのもおすすめです。
作品を見終わってすぐ帰るのも良いですが、
少し時間を置くと、見た作品の印象がゆっくり残ります。
コーヒーを飲みながら、
「目当ての作品を見る前と後の変化」
「どの作品が好きだったか」
「部屋に飾るならどれがいいか」
と振り返ってみる。
それだけで、美術館体験がより深くなります。
美術館は、作品を見る時間だけでなく、
見終わった後の余韻も含めて楽しめる場所なんです。
一人で行く楽しさ
美術館は、一人で行くのにも向いています。
一人で行くと、自分のペースで作品を見ることができます。
好きな作品の前で長く立ち止まる。
あまり興味のない作品は軽く見る。
疲れたら休む。
もう一度見たい作品に戻る。
誰かに合わせる必要がないので、自分の感覚に集中しやすいです。
一人で美術館に行くと、
自分がどんな作品に惹かれるのかがわかりやすくなります。
また、美術展によりますが、展示場内ではメモを取ることができます。
スマホのメモ機能でも足りますが、個人的には自分で書いた方がより記憶に残りやすいですし、パンフレットなどに直接書き込める方が色々手間もないので、鉛筆で書いています。
小さいサイズの鉛筆なら貸し出してくれたところがいくつもあるので、鉛筆を忘れたとしてもメモできるかもしれません。
ボールペンなどは、油分が作品に影響を与えかねないという理由で禁止されている場所が多いので、使用できません。
私は今のところ、メモを禁止されたことはありませんので、気の向くままにかきかきしています。
これは一人で行く最大のメリットの一つですね。
静かな時間を過ごしたいとき。
少し気分を変えたいとき。
自分の好きなものを見つめたいとき。
美術館は、一人時間を過ごす場所としてもおすすめです。
誰かと行く楽しさ
もちろん、誰かと美術館に行くのも楽しいです。
友人、家族、恋人と一緒に作品を見ると、
自分とは違う感想が聞けることがあります。
自分はあまり気に留めなかった作品を、相手が気に入る。
同じ作品を見ているのに、まったく違うところに注目している。
自分では言葉にできなかった魅力を、相手が話してくれる。
そんな発見があります。
ただし、美術館では見るペースが人によって違います。
じっくり見たい人もいれば、さっと見たい人もいます。
解説を読むのが好きな人もいれば、感覚で見るのが好きな人もいます。
一緒に行く場合は、終わりの時間を決めて、
「途中で別行動して、最後に集合する」
という楽しみ方がおすすめです。
その後で、どの作品が好きだったかを話すと、美術館の時間がより楽しくなります。
写真撮影はルールを確認する
美術館によっては、写真撮影ができる展示もあります。
一方で、撮影禁止の作品や展示室もあります。
撮影できるかどうかは、必ず館内の案内やスタッフの指示を確認しましょう。
撮影できる場合でも、フラッシュや動画撮影、自撮り棒などが禁止されていることがあります。
大切なのは、作品を守ることと、周りの人の鑑賞を邪魔しないことです。
写真を撮ることに集中しすぎると、
折角の実物を見る時間が少なくなってしまうこともあります。
撮影できる展示でも、まずは自分の目で見て、
その後に記録として写真を残すくらいの気持ちがちょうど良いです。
美術館をもっと楽しむ小さなコツ
美術館をより楽しむために、次のような小さな工夫もおすすめです。
- 混雑しにくい時間帯を選ぶ
- 作品数が多い展覧会では、全部見ようとしすぎない
- 気になる作品は少し離れて見る
- 近くで筆づかいや質感を見る
- 一度通り過ぎてから、気になる作品に戻る
- 帰る前に「今日の一枚」を決める
- ポストカードを一枚買って帰る
- 帰宅後に、気になった画家を少し調べる
小さな工夫ですが、これだけで美術館の体験はかなり変わります。
特に、近くで見る・離れて見る、という見方はおすすめです。
絵は、距離によっても印象がかなり変わります。
近くで見ると、絵の具の重なりや筆の跡が見えます。
少し離れると、全体の構図や光の流れが見えてきます。
絵画によっては、正面から見たら理解不能な絵が、
ある方向・角度から見たら全く別のものに見えるという、騙し絵的な作品もあります。
実物だからこそ味わえる楽しみです。
子どものように見てもいい
美術館では、難しい言葉で感想を言わなければいけない気がするかもしれません。
でも、そんなことはありません。
「きれい」
「かわいい」
「怖い」
「不思議」
「明るい」
「この色が好き」
「よくわからないけど気になる」
こうした素直な感想で十分です。
むしろ、最初はその方が絵を楽しみやすいです。
美術館では、大人らしい感想を持とうとしなくても大丈夫です。
子どものように、
「これ好き」
「これはちょっと苦手」
「なんでこんな絵を描いたんだろう」
と思いながら見ることも、とても大切です。
絵を見る楽しさは、自由に感じるところから始まります。
家に帰ってからも楽しめる
美術館の楽しみは、帰ったあとにも続きます。
気になった作品を調べる。
画家の人生を知る。
同じ画家の別の作品を見る。
買ってきたポストカードを飾る。
感想をメモする。
SNSやブログに記録する。
こうしたことをすると、美術館での体験が日常に繋がります。
特におすすめなのは、
気に入った作品を家の中で見える場所に置くことです。
個人的にはポストカードがおすすめです。
自分で選んで購入した記念でもありますし、
売られているものなので飾る分にも不足しません。
美術館で出会った作品を部屋に置くと、
その日の気分や感動を、日常の中で思い出すことができます。
美術館は、行って終わりではありません。
そこから自分の暮らしに、少しずつ広げていくことができます。
まとめ:美術館は、自分の「好き」に出会う場所
いかがでしょうか。
美術館、行きたくなっていただけたなら嬉しい限りです。
作品を見て、
自分が何を感じるのか。
どんな色に惹かれるのか。
どんな雰囲気が心に残るのか。
どんな絵を部屋に飾りたいと思うのか。
美術館は、日常から少し離れて、
静かに自分の感覚と向き合える場所です。
自分の「好き」に出会える場所です。
全部理解しようとしなくて大丈夫です。
全部の作品をじっくり見なくても大丈夫です。
有名な作品だけを目当てにしても大丈夫です。
感想がうまく言葉にならなくても大丈夫です。
大切なのは、
自分の目で見て、自分の心が少しでも動くことです。
ぜひ、難しく考えすぎず、気軽に足を運んでみてください。
そして、もし一枚でも
「この絵、なんだか好きだな」
と思える作品に出会えたなら、
その日の美術館体験は、きっと十分に価値のある時間です。
